夫によるいくつかのコメント
空港
愛知県の管理教育で育った身としては、国家権力の犬とかその関係筋
(椎名誠式言えば「濃紺の制服関係」)が偉そうにしている空港は、居るだけで不愉快な場所です。
成田空港に居ると、「こんなことならワインに釣られてこんなところへ来ないで
夫婦円満の方を放棄するんだった」と後悔します。
嫁さんも愛知、岐阜と並んで管理教育では悪名の高い千葉育ちなんですが、
そういう感覚は欠如しているようです。
が、今回は一度だけ例外があって、帰国のときのシドニーの荷物検査では、
こころもとない段ボール箱に入ったぼくらのワインが手荷物検査機から出てくると、
「袋はないのか?」と声をかけて、ビニール袋をわけてくれたり、
別のおっさんは、「いいワイン持ってるねぇ。わしは1日1本、オーストラリアワインを飲んどるぞ」
などと声をかけてくれ、気持ちよく出国できました。でも、おっさん、飲みすぎだよ、それは。
飛行機
今回の出発日は激しい雨でした。
そのせいか、あるいは全く関係ないのか、行きしのシドニー行きは2時間遅れました。
ロビーでさんざん待たされ、さらに飛行機に詰め込まれてから離陸まで、また散々待たされました。
エコノミークラスにしか乗ったことがないので、上流階級の方々の席のことはわかりませんが、
少なくとも我々庶民の席はどうにも窮屈でたまりません。
嫁さんはそれでも器用に席で寝ていましたが、ぼくは乗物の中では寝られないし、
今回のQuantasは食事が済んでからアルコール飲料のサービスがなく、
かと言って、消灯時間を過ぎてからは読書灯つけるのもはばかられ、
成田-シドニー間は往復とも軽くうとうとしただけで着いてしまい、
いくら時差が少ないとはいえ、毎度の通り窮屈で退屈で着いてから眠い移動になってしまいました。
写真
空港、飛行機と嫌いな物を2つ挙げました。
続いて3つ目を言うと、ぼくは写真が嫌いです。
まず被写体になると、一瞬だったはずの自分の姿から魂が抜けて2次元になって
永遠に残ってしまうのが嫌です。
今回は、ワイナリーに居る間は心穏やかで、今の姿なら永遠に残ってもいいかなぁという
気分になりましたが、やはり街中で写されそうになると嫌な気分になります。
次に写す側です。自分が写されるのが嫌だし、たまにシャッターを押してもブレてしまうし、
何より興味がないので写真を写すという行為からは長い間遠ざかっていました。
しかし最近、身近な人々の間でデジカメが普及してきて、彼らの使い方を見ているうちに
「思い出」とか「記念撮影」の類は性に合わないけど、
記録目的の写真というのは悪くもないかなぁ、という気分になってきたのと、
うちの仲人をむりやりさせてしまった岩品夫妻のお古を譲ってもらえることになったので、
ついにそのデジカメを手に入れ、今回の旅行に持って行きました。
しかし記録と思って写真を撮り出すと、今度は実験の経過でも記録しているような気分になって、
ついつい片っ端から写さないと気が済まなくなってしまいます。
そんな気分でファインダーを覗いていると、周囲に目配りができなくなって、
気づくと人がカメラの前を通り過ぎるのを遠慮して待っていてくれたりします。
ってなわけで、やっぱりぼくは写真が嫌いなようです。
ワイン
次は4つ目の…ではなく好きな物の話題にしましょう。
今回の旅のメインは何と言ってもワインです。
ぼくは「ワインを飲むのは好きか?」ときかれれば「好き」というのが答えなんですが、
微妙な味がわかるわけではなく、諸々のややこしい話に造詣が深いわけでもありません。
ヨーロッパのワインは氏素性がややこしかったり、
お上品な味の微妙な違いを楽しまなきゃいけなかったりで、
どうも初心者かつ向上心のかけらもないぼくには合いません。
その点、新大陸ワインの多くは
力強いはっきりした味が感じられるし(口の肥えた人には面白味がないのかもしれませんが)、
氏素性もヨーロッパのワインよりは明快だし
(おいしけりゃ氏素性はどうでもいいんですが、もう1回飲みたい、というときの再現性のために)、
ぼくは新世界ワイン(雑誌などではカリフォルニアは「新大陸」に含んでいないケースもありますが、
ここではカリフォルニアも含めます)が好きです。
そんなわけで、去年の新婚旅行では
他にも都合のいい事もあってカリフォルニアワインの産地、ナパバレーへ行ってきました。
嫁さんは今年、嫌がるぼくを釣る餌として、再びワインを使って、
ぼくをオーストラリアへ連れて行ってしまいました。
オーストラリアワインと言えば、何といってもシラーズ(Shiraz)です。
ナパでは別に行く先々でジンファンデルということはなかったんですが、
今回、行くワイナリー、行くワイナリーでとにかくシラーズが出ました。
これまでも面白がって何度かシラーズを飲んだことがありますが、
バロッサバレーで1日半、1日置いてハンターバレーでもう1日、そのシラーズを飲み続けて
なんとなくシラーズの味がわかった気がします。
割と酸味を感じるんですが、ピノノワールのようなさわやかな酸味ではなく、重い中の酸味で、
残念ながら、あまりぼくの好きな味ではないようです。
今回はバロッサバレーとハンターバレーの2ヶ所をまわってきたんですが、
全体を通して印象に残っているのはハンターバレーの白ワインです。
日本まで運んでくるのが大変なので、これだけはどうしても、というのにしぼって買ってきましたが、
全体的にぼくの好みの味が多かったです。
赤の方は、シラーズがあまり好みではなかったので(ということがわかったのも収穫ですが)
あまり好みの味には出会えませんでしたが、「これは」と思って買い込んだのは
2種類ともバロッサバレーのカベルネソービニオンでした。
今回の「これだ」は、いずれもワイナリーでのテイスティングではなく、
食事のときに飲んで、出会っています。
しかもカベルネソービニオン2種に至っては、リストに銘柄さえ書かれずに
by the glassでサービスされていたものです。おねえさんに
これ、おいしいから是非買いたいんだけど、なんていうワインですか?
ときくと、カウンターに積んである観光マップを1枚とってボールペンで印をつけてくれ
この(店の前の)道をあっちへ行って、次のガソリンスタンドを越えたところの左手よ
なんて返事が即座に返ってきたりして、
こんなおいしいワインがそんな手近な場所に、というのと
サーブしてくれる人のワインについての知識の豊富さの2つの意味で驚きました。
日本だと、「少々お待ち下さい」とおねえさんが厨房へ消えて行っちゃいますよね、きっと。
接客業の人々
旅行の間、ワイナリーの人々、宿舎の人々、食事の店の人々と
多くの接客業の人たちのお世話になりました。
たまに今一つ愛想のよくない人も居ましたが、多くの人は朝飯を喰いに行けば注文をきいてから
I hope you to enjoy your breakfast.
と言い残して去って行き、夕食のときに
明日はワイナリー巡りに行くんです
と言うと
Lovely!
と応えてくれ、また、特別な頼み事をして
Thank you.
と言うと
It's my pleasure.
と応えてくれました。
日頃の日本での経験とはずいぶん違う物を感じました。
他人の空似
シドニーで夕食を食べたROCKPOOLでぼくらにサーブしてくれたおばさんが
嫁さんの友達に似ていました。
そこでぼくは、
ここへ来た記念にあなたと彼女(嫁さん)の写真を撮らせて下さい
と頼んで(嘘じゃないでしょ?)写真を撮らせてもらいました。
まだ当の友達には見せていないようですが。
料理
アデレード、シドニーの都市では感じませんでしたが、
バロッサバレー、ハンターバレーでは「ボリュームたっぷり」を具現化した料理でした。
で、肝心の味の方は、肉のローストは日本の方がおいしいなぁという感想でしたが、
全体的にはおいしかったです。
ただ、嫁さんは最終日のシドニーで「ラーメン」、「うどん」、…、と苦しんでいましたが。
時差
シドニーからアデレードへの国内便の着陸直前、ぼくはキャビンアテンダントのおねえさんに
さっきのアナウンス、聴き取れなかったんだけど、今、何時?
とききました。
すると、シドニーから西へ飛んできたにも関わらず、時計を進めるように言われました。
不審に思いつつも腕時計を進め、最初の訪問先、Penfoldsへ向かいました。
そこで、3時半を指している腕時計を見ながら
ツアー、3時で終わっちゃったんだよねぇ?
ときくと
3時になったら日本人のお客さんがきて、日本語のガイドもつくから、
もう30分待って一緒に参加するといいよ
と言われ
?@※∴△…☆!
と思い、おじさんに
今日、日本から来たんだけど、こっち時間で今何時?
と尋ねると、実はまだ2時半でした。
で、時計を1時間戻し、バロッサバレーでの2日を過ごし、
アデレードへ戻ってきてホテルへチェックインすると、ベッドの上に
明日からday light saving timeだから寝る前に時計を1時間進めてね
という案内の紙が置いてありました。
もし見落としていたら、この旅2度目の飛行機乗り遅れ事件になるところでした。
まぁ1度目は国際線が遅れたのが原因で、こっちのミスではありませんけど。
で、翌日シドニーへ移動。シドニーでは出発前に時計を合わせるのを忘れて途中で気づき、
レンタカーの車自体の時計とラジオの時計がほぼ同じ時刻だったので
これを信じて腕時計を合わせました。
で、宿にチェックインすると
ディナーは何時からにいたしましょうか?
と訊かれたので、腕時計を見ると6時を指していました。
そこで嫁さんと
後、1時間ぐらい?
と相談し、
7時からお願いします
と告げました。で、部屋へ入って時計を見ると既に7時を指している…。
慌ててフロントへ走り、
さっき、7時からディナーって頼んだんですけど、8時にして下さい
と頼みました。時差に振り回された旅でした。
そう言えば、去年もナパで宿の部屋の時計を信じて腕時計を合わせ、
腕時計が10時半を指しているときに10時から開いているはずのワイナリーを訪れたら
まだ開いていなかったので、ワイナリーのおじさんに
昨日来たんだけど、こっち時間で今何時?
ってきいたんでした。
3度目の…
ハンターバレーでの宿舎、Peppers Guest Houseのレストラン、Chez Pok
(所在地の地名、Pokolbinから命名されたとのこと)で飲んだ
Allanmereのシャルドネが2人とも大変気に入りました。
そこで翌日、Allanmereを訪れ、セミヨン・ソービニオンブランを1本
(ぼくはこれも気に入ったんですが嫁さんはそれほどでもなかったので)、
シャルドネを2本買いました。
その日、宿に戻って荷物を整理すると、何本分かのすき間が捻出できました。
後はシドニーを残すのみで、シドニーではワインは買わないに違いありません。
そこで嫁さんと相談し、もう1本買う事にしました。
さて翌日、再びAllanmereを訪れ、ちょいとばかし恥ずかしかったので、
嫁さんに
1本でいいんだね?
と念を押した後、おじさんに
昨日、色々廻ったけど、このシャルドネが一番だよ。
荷物に1本だけすき間が見付かったから、もう1本ちょうだい。
と賛辞兼照れ隠しを述べて3本目のシャルドネを買いました。
おじさんも
ワインメーカーたちが喜ぶよ
と(言っていたんだと思う)喜んでくれ、お互いに幸福な気分で店を出ました。
車に乗り込むと、嫁さんが
やっぱりもうちょっと欲しい
と言い出し、さすがにぼくは恥ずかしさの限度を越えたので、
嫁さんを1人、店に送り込んだところ、
数分後、4本目のシャルドネと2本目のセミヨン・ソービニオンブランを手に戻ってきました。
えーご
ぼくは英会話ができません。
さらに彼らは例のオージーイングリッシュというのをしゃべっているようなのです。
宿で支払いの話をしているときに、聞き取れず何度も聞き返したら、
すごーくゆっくりしゃべってくれたんですが、payをpieかpaiかのように発音されては、
いくらゆっくりしゃべってくれてもわかりませんよ。
道路
アデレードとシドニーは普通の市街地の道路でしたが、
バロッサバレーとハンターバレーでは、ちょっと外れへ行くと未舗装道(unsealded)が残っていました。
また、日本ならせいぜい40km制限だろうと思うような片側1車線、ガードレールなしの道に
制限速度90kmの標識が立っていて、びっくりしました。
トイレにある手の乾燥機
日本のトイレに時々ついている手の乾燥機は、なかなか乾いてくれず、
結局ポケットからハンカチを取り出す羽目になることが多いのですが、
オーストラリアのトイレにあるのはどれも強烈でバッチリ乾きました。
オーストラリア製ではなくmade in U.S.Aでしたけど。
ヒツジ売ります
写真を撮りそびれてしまったんですが、ハンターバレーで道端に
SHEEP FOR SALE
って看板を見付けました。
隔離…?
ぼくは片手でスーツケースを押し、もう片手にはワインが3本入った段ボール箱をぶら下げ、
腰には貴重品の入ったウエストポーチをつけ、背中には手周り品の入ったナップザックを背負って、
嫁さんも片手でスーツケースを押し、もう片手ではワインが入った段ボールを2つ
(12本入りと3本入り)がくくりつけたキャリーを引っ張って、
同じ手に手周り品の入った紙袋を下げ、
腰にはぼくのより大振りのウエストポーチをつけ、
帰りの国際線のチェックインカウンターへ向かいました。
そこでスーツケースを預け、おばさんに
ワインが入っているんだ。「割れ物注意」って貼ってよ
とまくしたてました。
例によって向こうの言っていることが聞き取れないのでひと悶着あったんですが、
最終的には割れ物扱いで
チェックインしてもらうことができました。
で、飛行機に乗り込んでみると、ぼくらの席は最後列でした。
出発時間が近づき、数列前までは席が埋まってきているのに、
ぼくらの前、数列だけは人が来ません。
最終的には何人かやって来ましたが、妙に密度が低いまま離陸しました。
しばらくして嫁さんが気づいたのですが、どうも山ほど手荷物を持っていたので
最後列が割り当てられたみたいでした。
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