VP-mini88 Mark2の球を換えてみた

はじめに

TRIODE/SUNVALLEYのVP-mini88 Mark2の球を交換したときのことを、ちょっと書き留めておきます。しかし、駄耳では取っ替えひっかえしていると訳がわかんなくなってくる、というのが正直なところで(だったら換えなくてよかろう、って? それはごもっともなんですが…)、エージングもへったくれもなくヒドい話なのは承知していますが、交換直後の第一印象に留めておきます。

VP-mini88 Mark2について

既に販売を終了しており公式ページもなくなっているのでVP-mini88 Mark2について、ごく簡単に説明しておきます。

電圧増幅段には片chに1本の12AX7を使っていて、2段目がカソードフォロワの※2段構成になっています。出力段はKT88シングルの固定バイアスで、説明書には差し替え可能な球の例としてEL34/6CA7、6550Aが挙げられており、6L6は定格を越えている旨が書かれています。しかし、使うな、じゃなくって、お推めできません、とか充分ご注意下さい、とか続くところが山崎さんの男前なところだと思います。

※ どうしたわけか長い間「初段がカソードフォロワ」という誤記をしていましたので2023年8月13日に訂正しました。誤記をお読みになった皆さま、山崎さん、大橋さん、ごめんなさい。

12AX7をキット付属の球からNEC HI-FI GREEN SERIES 12AX7Aに換えてみた

このときが人生初の球交換でした。このときだけじゃなくって今に至るまでずっとそうなんですが、特に不満があったわけではなく、換えたらどうなるのかなぁ、と興味本位で換えてみました。ナショナルの心電図計用などというおどろおどろしい物もありましたが、倍ぐらいの値段でしたし、心電図よりHi-Fiだろう、という選び方でした。当時はまだラジオセンターにあったアムトランスで買いました。「どんな音がするんですか?」などとマヌケな質問をして、宮野さんに「そりゃアンプによるからねぇ」とあしらわれつつ飴ちゃんをもらった記憶があります。

音色が変わる、とか楽器間のバランスが変わる、とかいった変化があるんじゃないかと想像していたんですが、それらの変化は感じられませんでした。変化が感じられたのは、まったく予期しなかったところで、キットに付属の球では楽器の所在が左右のスピーカを結ぶ線の近辺に感じられていたんですが、NECに交換したところ、楽器の位置が奥の方へ沈んでいきました。

12AX7をNEC HI-FI GREEN SERIESからPHILLIPS JAN 12AX7WAに換えてみた

このときも、不満があったわけではなく、よぉし、そろそろいっちょう、というだけの話です。ラジオデパートのキョードーで買いました。

NECでよくなった奥行き感はそのまま、潤いというか弾力というかが感じられるようになりました。擬音で表現すれば、「プリプリッ」です。

出力管をキット付属のKT88からGolden Dragonの6550Cに換えてみた

値段の高い物がいい物なわけじゃないんですが、片っ端から買って試すわけにもいかず、評価の定まっている物は、それなりに高価なので、出力管は先送りにしていたんですが、とうとう手を出してしまいました。

GECのオリジナルなどは、とても手が出ず、現行管にすることにして、ザ・キット屋(の、実質的には属人的に大橋さん)に、部屋が狭いことやスピーカはFW108Nダブルバスレフ+FT38DとFE167Eバスレフ+FT17Hを使っていることなどの事情をお伝えして見繕ってもらったのが、復刻版Gold Lion KT88Golden Dragon 6550Cの2種類でした。

大橋さんには両者について丁寧にいろいろと説明していただいたんですが、6550Cの方が低域に量感と弾力がある、というのと小音量でのバランスがいい、というコメントにひかれ、6550Cを選びました。

TRIODE KT88とPHILLIPS 12AX7WA装着

今回は過去2回の12AX7のときとは異なり、文字による情報で先入観を持った上で聴いてしまいましたが、第一印象は「ねっとり、こってり」です。擬音が下品な気もしますが、良い印象を表現しています。大橋さんのコメントの「弾力」の部分に符合するんだと思います。また低域の量感も増した気がします。1980年ごろのフュージョン、KYLYNやT-SQUAREなどを聴くと、エレキベースやバスドラムがはっきりしたような気がします。

ただ1点問題があって、説明書には6550Aの場合にはバイアスをKT88と同じ電位に設定するように書いてあるんですが、6550Cについては情報がありませんでした。真空管(Electron tube)規格表データベースというサイトで閲覧できた6550Aの規格表6550Cの規格表によれば、最大プレート損失が6550Aの42Wに対し6550Cは35W、最大SG損失が6550AのPeak 10W/Average 6.0Wに対し6550Cは6Wと、6550Cの方が6550Aよりやや小さい定格であることがわかり、大橋さんに問い合わせたところ、KT88や6550Aと同じ電位に設定すればいい旨のお返事をいただきました。

Golden Dragon 6550CとPHILLIPS 12AX7WA装着

後日談

第一印象に留めると言いながら後日談を追記してしまいますが、仕事で外出したときに休憩時間を充てて立ち寄った渋谷のTOWER RECORDで見つけて買ったDear Old Stockholm Vladimir Shafranov meets Harry AllenというCDをFW108Nダブルバスレフで聴いたら、ベースがビンビンボンボンととんでもない音を出したので、定在波騒動のときに買って、最終的には入れないで使っていた吸音フェルトを慌てて入れました。

まぁ6550Cの低域は、それだけ威力がある、ということです。